コラム

介護保険の住宅改修|対象工事・20万円の上限・申請の順番と23区の上乗せ制度

この記事の結論

  • 介護保険の住宅改修は、要支援・要介護の認定を受けた方が対象です。手すり・段差解消など6種類の工事について、工事費20万円までの7〜9割が支給されます。
  • 工事の前に区へ事前申請が必要です。まず担当のケアマネジャー(認定前・要支援なら地域包括支援センター)に相談し、「住宅改修が必要な理由書」を作ってもらいます。
  • 23区のうち22区に、高齢者・障害者向けの区独自の住宅改修の制度があります。浴槽の交換や流し・洗面台の取替えなど介護保険の対象外の工事や、認定が「非該当」の65歳以上の方の手すり等が対象です。
  • 順番は「介護保険で使える工事は介護保険を先に」「対象外の工事を区の制度で」が基本です。区の制度も多くは工事前の申請が必要で、工事後に申請できると公式ページに書かれた制度はありませんでした。

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介護保険の住宅改修の概要

対象・金額・申請の時期は次のとおりです(2026年10月時点の厚生労働省資料と区の案内による)。

項目 内容
対象者 要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けた方。65歳以上は原因を問わず、40〜64歳は特定疾病(16種類)が原因の場合
対象住宅 実際に住んでいる住宅。新築は対象外。持ち主が別の場合は所有者の承諾書が必要
対象工事 手すりの取付け、段差の解消など6種類(次の節)
支給限度基準額 20万円(要介護度にかかわらず一律、住宅ごと)
支給額 20万円までの工事費の9割・8割・7割(最大18万円・16万円・14万円)
申請の時期 工事前の事前申請と、工事後の支給申請の2回
支払方法 償還払い(いったん全額を払い、後で払い戻し)。区によって受領委任払いも可
窓口 住んでいる区の介護保険担当課

対象者と負担割合は厚生労働省の介護保険制度について、20万円の基準額と事前申請は老企第42号と介護保険における住宅改修で確認しました。

対象になる6種類の工事

対象は告示で決まった次の6種類です。老企第34号の解釈から、読者が迷いやすい点を添えます。

種類 内容 対象外になる例
1. 手すりの取付け 廊下・トイレ・浴室・玄関、玄関から道路までの通路などに、転倒予防や移動・移乗のために付ける手すり 工事を伴わない置き型の手すり(福祉用具の貸与の対象)
2. 段差の解消 敷居を低くする、スロープの設置、浴室の床のかさ上げ 動力で動く段差解消機の設置
3. 床・通路面の材料の変更 畳から板床・ビニル系床材へ、通路を滑りにくい舗装へ ―
4. 引き戸等への扉の取替え 開き戸を引き戸・折戸へ、扉の撤去、ドアノブの変更、戸車の設置 自動ドアの動力部分の費用
5. 洋式便器等への取替え 和式から洋式へ、便器の位置・向きの変更 腰掛便座の設置、水洗化の部分の費用
6. 上の1〜5に付帯する工事 手すりのための壁の下地補強、床のかさ上げに伴う給排水工事、扉の取替えに伴う壁・柱の改修など ―

浴槽そのものの交換、流し・洗面台の取替え、階段昇降機は6種類に入りません。これらは後で説明する区の制度の対象です。

支給額と自己負担

20万円は「支給額」ではなく「対象になる工事費の上限」です。

  • 工事費20万円・1割負担の場合:支給18万円、自己負担2万円
  • 工事費30万円・1割負担の場合:20万円までの部分の9割の18万円が支給され、自己負担は12万円(20万円を超えた10万円は全額自己負担)

負担割合は介護保険の負担割合証で確認します。20万円は1回で使い切る必要はなく、残りを後の工事に回せます。転居した場合と、最初の工事のときより介護の必要の程度が3段階以上上がった場合(1回限り)は、改めて20万円まで使えます(老企第42号)。

申請の手順

事前申請の承認前に着工すると、原則として支給されません。厚生労働省の資料では、やむを得ない事情がある場合の例外が示されているだけです。

順番 誰が いつ 何をするか
1 本人・家族 工事を考え始めたとき 担当のケアマネジャーに相談。担当がいなければ地域包括支援センターへ
2 ケアマネジャー等 工事内容を決めるとき 「住宅改修が必要な理由書」を作成
3 施工業者 契約前 見積書(内訳書)と工事前の写真を用意。複数社の見積もりを取ることが厚生労働省の通知で勧められています
4 本人(代理提出可) 着工前 事前申請書、理由書、見積書、工事前の写真(日付入り)、所有者の承諾書(持ち主が別の場合)を区に提出
5 区 審査後 承認の通知。ここから着工
6 施工業者 工事後 工事前と同じ角度で工事後の写真を撮影、領収書・工事費内訳書を発行
7 本人 工事後 支給申請書、領収書、内訳書、工事後の写真を区に提出し、支給を受ける

理由書は、厚生労働省の通知で「基本的には居宅サービス計画等を作成する介護支援専門員等」が作るものとされています。中央区はケアマネジャーまたはおとしより相談センター(地域包括支援センター)が作成すると案内しています(中央区)。

償還払いと受領委任払い

支払方法は2つあり、受領委任払いを使えるかは区と業者によります。

方法 業者に払う額 条件
償還払い 工事費の全額。後日、7〜9割が区から振り込まれる 業者の指定なし
受領委任払い 自己負担分(1〜3割)だけ。残りは区から業者へ直接支払われる 区に登録した取扱事業者が工事する場合のみ

中央区・練馬区はどちらも案内しています(中央区、練馬区 償還払い、練馬区 受領委任払い)。立て替えが負担になる場合は、見積もりを頼む段階で業者が区の取扱事業者かを確認してください。

23区の区独自の住宅改修の給付・助成

当サイトが23区の公式ページと要綱を確認して集計(2026年10月24日時点)したところ、高齢者・障害者向けの制度(耐震シェルターの設置助成などを含む)は22区に54件ありました。多くは次の2つに分かれます。

  • 予防給付:介護保険の認定で「非該当(自立)」となった65歳以上の方向けに、手すり・段差解消など介護保険と同じ種類の工事を給付するもの
  • 設備改修:要支援・要介護の方向けに、浴槽・流し・洗面台の取替えなど介護保険の対象外の工事を給付するもの

区ごとの一覧

金額の多くは給付額ではなく、対象になる工事費の上限(基準額)です。自己負担は介護保険と同じ1〜3割の区が多くあります。

区 認定なし(非該当)向け:手すり等 要支援・要介護向け:浴槽等の設備
千代田区 介護予防住宅改修等給付 20万円 自立支援設備改修等給付 浴槽37.9万円、流し・洗面台15.6万円、便器10.6万円ほか
中央区 住宅設備改善給付(予防給付)20万円 同 浴槽37.9万円、流し・洗面台15.6万円、便器10.6万円、階段昇降機
港区 高齢者自立支援住宅改修給付(予防給付)20万円 同 浴槽37.9万円、流し・洗面台15.6万円、便器10.6万円
新宿区 自立支援住宅改修 20万円 住宅設備改修 浴槽37.9万円、流し・洗面台15.6万円、便器10.6万円
文京区 高齢者等住宅修築資金助成 工事費の10%・上限20万円 高齢者住宅設備等改造事業 浴槽37.9万円、流し・洗面台15.6万円、便器10.6万円
台東区 高齢者住宅改修給付(予防給付)限度額は区ページに記載なし 同(設備改修給付)
墨田区 高齢者自立支援住宅改修助成(予防改修)20万円 同(設備改修)浴槽・流し台・洗面台・便器
江東区 高齢者住宅設備改修給付(予防給付)20万円 同 浴槽37.9万円、洗面台・流し台15.6万円、トイレ10.6万円、階段昇降機80万円
品川区 高齢者自立支援住宅改修給付(予防給付)20万円 同 浴槽37.9万円、流し・洗面台15.6万円、便器10.6万円、昇降機40万円
目黒区 住宅改修費の支給(予防給付)20万円 同 便器16.2万円、低浴槽37.9万円、流し・洗面台15.6万円
大田区 データなし 高齢者自立支援住宅改修助成 浴槽37.9万円、流し・洗面台15.6万円、便器10.6万円
世田谷区 高齢者住宅改修費助成(予防改修)20万円 同(設備改修)浴槽37.9万円、流し・洗面台15.6万円、便器10.6万円
杉並区 高齢者住宅改修給付 手すり・便器洋式化20万円、附帯用具10万円 区ページで確認できず
豊島区 高齢者自立支援住宅改修費助成(予防的助成)20万円 同 浴槽37.9万円、流し等15.6万円、便器10.6万円
中野区 自立支援住宅改修等給付(限度額は資料に記載なし) 同
北区 住宅改造費助成(限度額は資料から特定できず) 同
荒川区 高齢者住宅改修給付 予防給付20万円、転倒防止給付(手すり)6万円 同 浴槽37.9万円、流し・洗面台15.6万円、便器10.6万円
板橋区 高齢者住宅設備改修費助成(介護予防住宅改修)10万円 同 浴槽・流し・洗面台(限度額は区ページに記載なし)
練馬区 自立支援住宅改修給付 予防給付 20万円 同 設備改修 浴槽25万円、流し・洗面台15.6万円、便器10.6万円、昇降機100万円
足立区 高齢者住宅改修助成(予防給付)20万円 同 浴槽20万円、流し15.6万円、便器10.6万円、階段昇降機133.2万円
葛飾区 自立支援住宅改修費助成 20万円 住宅設備改修費助成 浴槽37.9万円、流し・洗面台15.6万円、階段昇降機
江戸川区 データなし 住まいの改造助成 便器10.6万円、浴槽37.9万円、流し・洗面台15.6万円、階段昇降機等200万円
渋谷区 データなし データなし

制度名・金額は各区の公式ページ・要綱・案内資料の記載です(出典は記事末の一覧)。新宿区・葛飾区・豊島区・中野区・世田谷区の一部は、ページや資料の更新が令和7年度以前のため、申請前に区へ現行の内容を確認してください。障害者手帳をお持ちの方向けの住宅設備改善の制度もありますが、目黒区・大田区・北区・葛飾区などは介護保険が使える場合は介護保険を優先すると明記しています。

データから分かること

  • 浴槽の交換で37.9万円の基準額を設けている区は14区あります。浴槽の交換は介護保険の6種類に入らないため、浴室の改修では、手すり・段差解消を介護保険、浴槽を区の制度で、と組み合わせられる場合があります。併用の扱いは区によって異なります(次の節)。
  • 54件のうち、工事前(着工前または契約前)の申請が必要と公式に書かれた制度は45件、読み取れなかったものが9件で、工事後でも申請できると書かれた制度は0件でした。
  • 予防給付は、介護保険の認定を申請して「非該当」と判定されていることが条件の区が多くあります。杉並区は申請日前6カ月以内、足立区は判定から1年以内という期限があります。
  • 目黒区・練馬区の高齢者向け給付は、区と協定を結んだ事業者が工事することが条件です。業者を先に決めてしまう前に確認が必要です。

介護保険と区の制度の使い分けと順番

結論として、要支援・要介護の方は介護保険を先に使い、対象外の工事を区の制度で補います。

状況 使う制度 順番
要支援・要介護で、手すり・段差解消・扉・便器などの工事 介護保険の住宅改修 介護保険を優先(北区・板橋区・葛飾区・江戸川区などが明記)
要支援・要介護で、浴槽・流し・洗面台の取替え、階段昇降機 区の設備改修の給付 介護保険の工事と同時に計画し、区にも工事前に申請
65歳以上で認定が「非該当」 区の予防給付 先に介護保険の認定を申請し、非該当の結果を受けてから区に申請
介護保険の20万円を使い切った後の追加工事 区によって異なる 同じ種類の工事に区の制度を重ねられるかは区へ確認

併用の扱いは区によって違います。墨田区は設備改修助成を介護保険と併用できるとし、練馬区は浴槽と便器、荒川区は便器の洋式化について介護保険との併用を認めています。一方、大田区は同じ箇所で介護保険との併用はできず、豊島区は介護保険で同じ改修をした場合は区の助成を受けられないとしています。足立区は浴槽・便器は介護保険を優先するとしています。

1回の工事で両方を使う場合は、ケアマネジャーに区の制度も使いたいと伝え、理由書と見積書を介護保険分と区の制度分に分けて作ってもらうと手続きが進めやすくなります。

読者が迷う点

介護保険の住宅改修について、よくある疑問と答えです。

  • 賃貸住宅でも使えますか:介護保険は使えます。所有者の承諾書が必要です。区の制度は区ごとに条件が違います。
  • 工事を始めてしまいました:介護保険も区の制度も、事前申請がないと原則として対象になりません。着工前に区へ相談してください。
  • 古くなった浴槽の交換は対象ですか:介護保険・区の制度とも、身体の状態に合わせた改修が対象です。千代田区・江東区・北区・荒川区などは、老朽化や故障による取替えを対象外と明記しています。
  • 業者はどこでもよいですか:介護保険の償還払いは業者の指定がありません。受領委任払いや一部の区の制度は、区に登録・協定した事業者に限られます。

次にすること

使う制度と申請の順番を確かめたら、次のページで住んでいる区や工事の場所の制度を確認してください。

  1. ケアマネジャー(または地域包括支援センター)に、改修したい場所と区の制度も使いたいことを伝える
  2. 区の取扱事業者かどうかを確かめたうえで、2社以上に見積もりを依頼する
  3. 区への事前申請が承認されてから契約・着工する

出典

この記事の数値と制度の条件は、次の公式資料で確認しています。

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